こどもの病気の不安と負担がゼロになる
─小児科専門医が書いた1000の処方せん─
発熱・風邪・感染症・予防接種・皮膚トラブル・発達の悩み──子育ての「困った!」に、小児科専門医がやさしいことばで寄り添います。
この記事でわかること
✅ 黄色や緑の鼻水だけでは、細菌感染や抗生物質の必要性を決められない理由
✅ 鼻水に白血球や酵素が混ざり、色が変わる仕組み
✅ 色ではなく「日数」と「全身状態」で受診を判断するポイント
「鼻水が黄色くなった」だけでは悪化と決めません
透明だった鼻水が、数日たって黄色く、あるいは緑がかってきた。それを見て、「バイ菌に感染した?」「悪化した?」「抗生物質をもらわなきゃ」と不安になる方は、とても多いです。
まず知ってほしいのは、→ 黄色や緑の鼻水はウイルス性の風邪でもよく見られ、色だけでは細菌感染かどうかも、抗生物質が必要かどうかも判断できないということです。
細菌性副鼻腔炎でも色のついた鼻水は見られるため、色は細菌感染を肯定も否定もしません。
「色が濃い=重症」「色が濃い=抗生物質」という思い込みは、世界的にもよくある誤解です。この記事では、なぜ鼻水の色が変わるのか、その仕組みと、本当に見るべきポイントをお伝えします。
鼻水の色が変わる仕組み
風邪をひくと、鼻水は次のように変化していくことがよくあります。
透明・サラサラ(初期):ウイルスが入ってきて、鼻の粘膜が反応し始めた段階
白っぽく、ねばねば(数日後):免疫細胞が集まり、粘り気が出てくる
黄色〜緑色(さらに数日後):白血球やその酵素、濃くなった粘液などが混ざり、色がつく
炎症で集まった好中球などの白血球や、その酵素が混ざることで鼻水が黄・緑色になることがあります。これは免疫反応の一部ですが、→ 「ウイルスを退治し終えた証拠」でも「細菌がいない証拠」でもありません。
感冒では鼻水の色が途中で変わることがよくあります。
→ 色が濃くなったという一点だけで、悪化や抗生物質の必要性を判断しません。
「色」では抗生物質の必要性は判断できない
「でも、黄色い鼻水のときに抗生物質をもらったら治った」という経験がある方もいるでしょう。
→ 単純な感冒なら、自然に軽快する時期と重なった可能性があります。一方、細菌性副鼻腔炎など抗菌薬の適応を満たす場合は効果が期待できるため、色ではなく経過と全身状態で医師が判断します。
複数の研究で、「鼻水の色」だけでは細菌感染かどうかは判断できず、色を理由に抗生物質を出しても治りは早くならないことが示されています。
→ 世界の診療ガイドラインでも、「鼻水の色は抗生物質を出す根拠にならない」とされています。
風邪の原因はほとんどがウイルスで、ウイルスに抗生物質は効きません。
→ ただし、経過から細菌性副鼻腔炎などを疑う場合は、診察のうえで抗菌薬を検討します。
では、何を見て受診を判断する?
鼻水の"色"ではなく、次の2つで判断します。
→ 「日数(続いている期間)」と「全身状態・ほかの症状」です。
①経過:抗菌薬が必要な合併症を考える4項目
厚生労働省の最新手引きでは、次のいずれかに当てはまる場合、化膿性副鼻腔炎など抗菌薬の適応となる病気を考えます。
⚠ 10日以上続く鼻水・後鼻漏があり、日中の湿った咳が続く
⚠ 39℃以上の発熱と膿性鼻汁が3日以上続き、ぐったりするなど全身状態が悪い
⚠ 感冒に続き、約1週間後に再び発熱する、または日中の鼻水・咳が悪化する
⚠ 化膿性中耳炎、細菌性肺炎、尿路感染症、菌血症など、別の抗菌薬適応疾患を合併している
感冒は通常2〜3日で症状がピークとなり、多くは10日以内に軽快しますが、軽い鼻水や咳は2〜3週間残ることもあります。
→ 10日たったという一点だけで細菌感染や抗菌薬適応になるわけではなく、「改善がない」「日中の湿った咳が続く」など経過全体で判断します。
②全身状態・ほかの症状
⚠ 高熱が続く、ぐったりしている
⚠ 顔(ほおや目の周り)の痛み・腫れ
⚠ 目の周りが赤く腫れる、片側だけ強く腫れる
⚠ 耳を痛がる
⚠ 呼吸が苦しそう
→ これらがあれば、色に関係なく受診しましょう。目の腫れに、見えにくさ・二重に見える・眼球を動かすと痛い、強い頭痛、首の硬さ、繰り返す嘔吐が伴う場合は、同日中に緊急評価が必要です。
🚨 乳児・呼吸の危険サインは日数を待たない
🚨 生後3か月未満で38.0℃以上 → 速やかに受診
🚨 呼吸が速い、鼻がピクピクする、胸がへこむ、うなる、無呼吸、唇が青い
🚨 母乳・ミルクを十分飲めない、8時間以上尿が出ない、起こしにくい
無呼吸、唇の青紫色、強い呼吸困難、反応低下は119番の目安です。
鼻水そのものへの家庭ケア
鼻水は「出す」ことで、ウイルスやほこりを体の外に追い出しています。
→ 無理に止める必要はありませんが、つらそうなら次のケアで楽にしてあげましょう。
生理食塩水を点鼻し、やさしく吸引する:特に授乳・食事・睡眠前に。頻回・強い吸引は粘膜を傷めるため避ける
乳児は母乳・ミルクを少量ずつこまめに:自己判断で水だけを大量に追加しない
加湿器は清潔な冷霧式を使う:説明書どおり頻繁に洗浄し、過加湿・カビを避ける
熱い蒸気や熱い蒸しタオルを顔に近づけない:やけどを防ぐ
→ 鼻づまりで母乳やミルクが十分飲めない、眠れない、呼吸が苦しそうなときは、薬だけで様子を見ず受診してください。乳幼児では鼻水薬や市販のかぜ薬の効果が乏しく、副作用が問題になることがあります。
「透明でも要注意」なこともある
黄色い鼻水を心配しすぎる一方で、意外に見落とされるのが「透明の鼻水」です。
→ 透明でサラサラの鼻水がダラダラと長期間続く場合は、風邪ではなくアレルギー性鼻炎のことがあります。
✅ くしゃみを連発する
✅ 目のかゆみをともなう
✅ 季節性がある、特定の環境で悪化する
→ こうした特徴があれば、風邪ではないかもしれません。長引く透明の鼻水は、一度相談してみてください。(※アレルギー全般の詳しい話は、本noteでは扱わない方針です。気になる場合はかかりつけ医へ。)
🩺 にんにんキッズクリニックからの、ひとこと
「黄色や緑の鼻水はウイルス性の風邪でも細菌性副鼻腔炎でも見られるため、色だけでは抗菌薬の必要性を決められません。10日以上改善しない日中の湿った咳、39℃以上と膿性鼻汁が3日以上、一度軽快後の再悪化など、経過と全身状態で判断します。乳児の哺乳不良や呼吸異常は日数を待たず受診してください。」
まとめ
✅ 黄色や緑の鼻水はウイルス性でも細菌性でも見られ、色だけでは抗菌薬の必要性を決められない
✅ 白血球や酵素などで色がつくが、「ウイルスを退治し終えた」「細菌がいない」証拠ではない
✅ 鼻水の色では抗生物質の必要性は判断できない。ガイドラインでも色は処方の根拠にならないとされる
✅ 10日以上改善しない湿った咳、39℃以上+膿性鼻汁3日以上、約1週間後の再悪化などが再評価の基準
✅ 生理食塩水とやさしい鼻吸いでケア。乳児の哺乳不良・無呼吸・陥没呼吸・チアノーゼは日数を待たない
参考文献
厚生労働省『抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 医科・外来編』(2026年)
Wald ER, et al. Clinical Practice Guideline for the Diagnosis and Management of Acute Bacterial Sinusitis in Children Aged 1 to 18 Years. Pediatrics. 2013;132(1):e262-e280.
Kenealy T, Arroll B. Antibiotics for the common cold and acute purulent rhinitis. Cochrane Database Syst Rev. 2025;CD000247.
National Institute for Health and Care Excellence (NICE). Sinusitis (acute): antimicrobial prescribing.
日本鼻科学会『鼻副鼻腔炎診療の手引き2024』




